昼、着ぶくれした形(なり)でグルッペに向かう。 やっとカゼが治ったかな、という感じである。 日差しがあかるく、道によってはサンルームのようだ。 あちこち、ほころびはじめた、梅。 大家さんと立ち話をする。 囲碁と絵がすきらしい。 ラジオを聴きながら、ひとり碁石をならべる、 そんな時間が大切なのだという。 玄関先の、古木の幹に生(む)した苔をなでているぼくを見て、 ほんとに苔がおすきのようねえ、とわらっていた。 苔といえば、 八ヶ岳だったか、いちめんの倒木を苔が被い、 くもった風景のなかに、異様にうつくしい宇宙を見せていたっけ。 4年前の夏には、 同僚の妻がよせてくれた、苔の写真になぐさめられた。 ヒラウロコゴケの、球状群落。 どこか、遠い宇宙からかやってきて、 地球の、もっとも澄んだ水のなかに都市をつくった。 そんな気がしてならなかった。 |