新・荻窪便りNo.7
新・荻窪便りNo.4で、「帰る」という言葉をくりかえし使った。ところが、時間が経つにしたがって、なんだかすっきりしない負荷が、この言葉の周りにくっついてきている。何故なのだろうか。
最初、ぼくは「自然に帰る」と書いたが、何度か読み返すうちに、この言葉に対してある違和感を感じはじめた。それでこれを削除した。ないほうがよっぽど気が楽になる。
一枚のフィルムを使用した。深夜の蛞蝓(なめくじ)である。乾いたアスファルトの上を移動している。
本当は、なぜ?とか、どこへ?とか、そんな問いは必要ないのだろう。
ぼくが蛞蝓を写し、そのフィルムをここに見える形で置いたに過ぎない。
書籍の間から、忘れていたネガが出てきたに過ぎない。
1985年頃と時間をしるした。
1969年の春上京し、1995年の7月まで、ぼくは自分の時間を厚い殻のなかに閉じこめてきた。
これからは時間をしっかりとタイプするつもりだ。
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