新・荻窪便り No.5



 押入の書籍を整理していたら、奥の方からフィルムが数本出てきた。透かしてみると、どうも二十年ほど前のものらしい。スキャナーで読み、反転させてなんとか見られるようにする。すっかり忘れていた。懐かしさのあまり、思わず声を出してしまった。



Hiromu & Sam



 二十歳前後のおとうとたちである。十和田湖の展望台で撮ったものに違いない。わたしのも何枚かある。しかも、彼女とならんで。いやはや、いやはや。もう時効かもしれないが、公開は控えさせていただくとして、日傘を手にした彼女は、じつにあかるく、ふっくらとしている。それに、とてもきれいだ。わたしはといえば、長髪、ちょび髭、ラッパがたジーパンによれシャツ。思わず苦笑してしまう。

 彼らを撮っているのは、わたしである。彼らは、わたしを見ている。

 新・荻窪便りNo.6 は、ふたりのおとうとに捧げよう。



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