新・荻窪便り No.4
われわれの脳の記憶の層には、はじめて存在した生物から人類にいたるまでの、気の遠くなるような連鎖の痕跡が、螺旋状に残っている。 小鳥が話しかける、動物と心がかよいあう、と誰かが言うのを聞いても、ごく自然にとらえているところがある。
むかし、友人がカナリアをつがいで飼っていた。ある日、片方がカラスに襲われたのだが、残された方が、半分眠っていたわたしの耳元で、なにかをうったえていた。はっと目が覚めたときには、最後のことば以外、どうしても思い出せない。あの日から間もなく、残った方も猫に喰われてしまった。
ごめんなさい。謎は残しておきましょう。 「私は、あなたが待っていた女なの。これからは何も怖がることないわ。いつも私が一緒。手を伸ばせば、私の手がすぐそばにある」
映画「世にも怪奇な物語」の第3部、F・フェリーニの作品から。
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