新・荻窪便り No.4




1985年頃のフィルムから



 はじめて始祖鳥の化石を目にしたとき、<ココニ、ワタシノ骨ノ フルサトガアル>と、そう直感した。
 われわれの脳の記憶の層には、はじめて存在した生物から人類にいたるまでの、気の遠くなるような連鎖の痕跡が、螺旋状に残っている。
 小鳥が話しかける、動物と心がかよいあう、と誰かが言うのを聞いても、ごく自然にとらえているところがある。

 むかし、友人がカナリアをつがいで飼っていた。ある日、片方がカラスに襲われたのだが、残された方が、半分眠っていたわたしの耳元で、なにかをうったえていた。はっと目が覚めたときには、最後のことば以外、どうしても思い出せない。あの日から間もなく、残った方も猫に喰われてしまった。


 鳥が残した最後のことば、聞きたい?     

 ごめんなさい。謎は残しておきましょう。   
 そのかわり、男なら誰もが願うシーンをどうぞ。

 「私は、あなたが待っていた女なの。これからは何も怖がることないわ。いつも私が一緒。手を伸ばせば、私の手がすぐそばにある」



映画「世にも怪奇な物語」の第3部、F・フェリーニの作品から。




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