新・荻窪便り No.2





 紅葉しはじめの頃の善福寺公園である。今日もひとりで、ゆっくりと歩いている。こんなにいい日なんだから、あの人を誘いたかったな。チャンスがあったのに、いつも後で気がつく、とすこしだけ悔やむ。「あの人」とは、いつものお店でお会いすることのある、素敵な女性である。
 水鳥が、みずかきを飛行艇のフロートのようにして、つぎつぎと着水してくる。(失礼、水鳥のほうが飛行艇よりもはるかに、はるかに先輩でしたね)。水際で幼い子がよろこんでいる。
 都会の自然だって、生きているんだから、こうやって歩いていれば十分いい気持ちになれる。
 あと10日もすれば、もっと綺麗に色づくだろう。

 そして、十日後。





 この紅葉は十和田湖のものと変わらないうつくしさだ。
 東京から出られない身だから、余計感じてしまうのかしら。もう2年も帰っていないふるさと。八幡平の毛氈峠を一緒に歩こうね、と母と約束した少年の頃。母よ、かならず行きますよ。



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