1997. 3.25

 新・荻窪便り No.18 



 「風櫃の少年」を見た。
 故郷を逃げるように出た少年達。 都会の環境に、戸惑いながらも順応していく。 未来は茫洋とした海のごとく目の前にあり、好奇心も、刺激も、分別も、生命力のある根からのびている。 彼らをしっかりと歩ませるもの、それはなんだろうか? それは自分の記憶の中にある、だいじな部屋。 それは愛と出会ったときに花ひらく、蕾のようなもの。 それは緑夏樹のように広がる、清冽なハルモニー。
 確かに、今のぼくにもある。 勿論、あなたにもあるだろう。
 少年のひとりが恋をしている。 愛する夫(ひと)を失いつつある、年上の女性に。 スクリーンは、この恋の行方を暗示している。 
 海はつねに動いている。 変わらないのは、つねに動いているということ。
 恋の行方は、ひとりひとりの時間の中に生きている。
 心地よい波のように、
 繰り返し、繰り返し ・・・ 。



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