1997. 2.13
新・荻窪便り No15
荻窪の古書店 T に久しぶりに顔を出す。奥さんが笑顔で迎えてくれた。
この春に郷里へ帰ることを告げる。途端に、
さびしそうな顔に変わり、すこし困ってしまった。ありがたいことだ。
入り口に、岩波書店「魯迅全集」が積んである。畑仕事の合間に、じっくりとつき合うのもいいな。『故郷』というのは、どんな作品なのだろう。
『ハーブとスパイス』のフェンネル(英名Fennel セリ科) の頁に、唐代の詩人賀知章の「回郷偶書」が紹介されていた。フェンネルの和名はウイキョウ。中国語では「茴香」というらしい。魯迅と賀知章は同郷であり、魯迅は上海で客死し、賀知章は老いて役職を捨て、郷里で隠棲したと聞く。
もとより、ぼくはただの田舎者であり、病を得て郷里に帰るに過ぎない。
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