1997. 1.19

 新・荻窪便りNo.13



 映画「風の丘を越えて―西便制―」を見た。脚本キム・ミョンゴン、監督はイム・グオンテクである。また、泣いてしまった。パンソリの歌の魂に、はじめて出会った。

 " 澄んだ声だけでは人の心は打てない "
 " 恨(はん)を積むことは生きること "
 " そして情念に埋もれず、恨を越える声を出すこと "

 ぼくは「白鳥扼殺者」の作者の言葉を思い浮かべた。

 " 人は歳をとると憎しみを忘れる "

 これは警告である。不当な苦しみを受けながらも、生き続ける炎であるもの。

 この映画のラストシーンは、人の結びつきの、最も美しい瞬間が流れている。



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