樹木がもつ腐朽防御作用

樹木には腐朽菌に対する防御作用(CODIT)があることはよく知られている。
たまたま、調査を依頼された公園のサクラにムキダケが生えてきた。
見ただけでは確認できないため高所作業車に乗って腐朽部分を木槌で叩いてみたら、めり込んでしまった。
なおかつ、この枝が道路にはみ出ていたため、危険防止・生命尊重の考えから腐朽枝切断の診断を出した。





切り落とした枝である。左の写真では樹皮が既に死んでしまっている。右の写真では白い菌糸が樹皮を覆っている。




しかし、業者がチェンソーで切断した木口を見てびっくり、腐朽部分に沿って関ヶ原の戦い?の最前線みたいに樹が腐朽部分をがっちりガードしているのが確認できた。
写真のスポンジ状に見える部分が腐朽部、白い部分が生きている部分、そして、オレンジ色に見える部分が防御部分である。特に左の写真の腐朽部右端のガード部分を見て感動した。



どの切断面を見てもしっかり防御している跡がありありと見える。



枝先の細い部分であるが、これは木の芯と外側の両側から腐朽攻撃を受けていたが、それに対してしっかり防御している姿がうかがえる。

腐朽することで自分の仲間を増やしていく菌類と、腐朽されると枝折れや倒伏に陥るため必死になってそれを防ごうとする目に見えない自然界の戦いの一部を垣間見たような気がする。

ただ、確実にこの木の強度は失われているし、この戦いの結果も見えているため今回の処置は正解であることを確信した。

また、木に腐朽部分を見つけたら、腐朽部分をかき取り、防腐→木固めをし、ウレタンパテウッディドクター等で人工樹皮を作って腐朽の進行を止める外科処置は決して無駄ではないことも再確認できた。