SOL Y SOMBRA (マヨルカ)2 <Mallorca>1へ
バルデモッサという小さな村のBarで、マヨルカの地図を買ってしまったのが全ての始まりなのだ。最初はまぁイビサよりは少し大きい島だし、一週間も居ればいいかな、パルマの街は大きくてまるでマドリッドみたいに賑やかだし、島の反対側2ヶ所ぐらいで切り上げて、バレンシアに戻る様だなと軽く考えていたのだ。そして地図の次に大きな要因としてあげられるのは、バスの時間を考えずに、さらに先のソジェ−ルという街に行ってしまったのが、この2週間の連泊が始まるお膳立てを完璧なものにしたのだ。地図を買ったBarを出たのは3時だった。バスが来る時間まで1時間以上ある。僕は再び村の中をウロウロして、それでもまだ30分位前にバス停へ行って、石垣に座って日光浴しながらバスを待つことにしたのだ。さっき教会の鐘が鳴ってたから、4時は過ぎてるはずだと思った。(僕はこのとき時計を持っていかなかったのだ。まあ普段も宿に置きっぱなしなのだけど)暫くしてバスは来て、降りた客と同じ位の人数の客が乗って出発した。バスの中に付いている時計はちょうど5時だった。途中デイアという、山の斜面に点々と広がる美しい村を通って、海を左側に見ながら、オリ−ブ畑の広がる急な山の斜面の中の細くて曲がりくねった道をバスは進んで行き、30分も走っただろうか、海から離れたなぁと思ってた僕の視界に、何とそれは突然何の前触れもなく、はたして何処から現われたのか疑ってしまいたくなる程、忽然と登場した風景があった。低めの位置からの赤味を帯びたそれでも強い太陽の光を、順光で浴びている切り立った山々とその麓に広がる街は、雲一つ無い真っ青な空と見事なコントラストを持って佇んでいた。息を呑むとか、瞬きを忘れるとか、吸い付けられるとか、身動きが出来ないとか、溜息が出るとか、大声で叫びだしそうになるとか、涙がこぼれるとか、ゾクッとするとか、そんな表現は全てうっちゃってしまいたくなるほど、そうなのだこういう風景はやはり実際に自分の目で見るべきものなのだ、写真もビデオもウソッぱちなのだと完全に納得している自分が、満員のバスの真ん中辺の座席で、ドイツ人のオバサンの隣に座ってジッとその風景を眺めていた。街の中へバスが入って行くと、あの山々は家に隠れて見えなくなった。3km先の港がそのバスの終点であり、僕はそのまま港まで行った。帰りのバスあるいは電車が少し心配であり、この街にはまた来なければなるまいと思いつつ、電車の時刻表を見ると、5時57分のが港から街まで行って、パルマ行きの最終に接続する電車だった。バスから降りる時にチラッと見た時計は5時のままであり、今の時間を知る必要があった。Barへ入ってBeerを飲み時計を探すと、後5分で7時になるところだった。そんな馬鹿な、いくら何でも2時間もバスに乗ってはいないはずである。精精40分か50分だ。あのバルデモッサの教会の鐘は一体何時だったのだ?あのBarの3時の時計ははたして動いていたのだろうか?確かなことは、今Beerを飲んでいるBarの時計はしっかり動いていて、カウンタ−の女の子がしている腕時計も、同じ時刻を指しているということだった。バスも電車ももうパルマ行きは無いのだ。もう慌てても仕様がない。陽が沈むまではまだかなり時間があるので、電車で街まで戻り、少し歩いて街の外れまで行き、夕陽に映える切り立った山を眺めた。右側から連なった山と左側から連なった山とがぶつかるべき所が、両方とも崩れてなくなったみたいに切り立った崖となっており、その谷の向こうに、三角に尖った山が真ん中に見えていた。右側の崖の天辺は、その右側の連なった山々の一番高い部分であり、左側の山々の一番左側が、さらに高くそびえて天を刺していた。その山々のほとんどの部分は岩肌であり、木と思えるものは麓に近い部分と、岩と岩との隙間にしがみついている低木位のものだった。やはりもう少し高い所から眺めるべきだなとは思ったのだが、陽のある内に車を捕まえないといけないので、も一度出直すべく幹線道路に出て手を上げた。何と最初の一台がすぐ止まってくれて、あぁこんなに簡単に捕まるのならもう少し居ればよかったなぁなんて、車の後部座席に座りながら考えていた。乗せてくれたのは旧東ドイツから旅行で来ているカップルで、英語を聞くことは出来ても話すことが出来ず、彼等はドイツ語で僕に話し掛け、僕は英語で答えるという、ほとんどチンプンカンプンな会話が、その車の中でなされたのだった。さて宿に戻って地図を広げてみる。あの左側の一番高い山が、プイグ・マヨ−ルという、ここマヨルカで一番高い1445mの山であろうと思えた。そして右側の山の崖の角が高いかなと思ったのだが、もっと右側の方に1068mのアルファビアというのがある。しかし高さで少し負けるのかどうか知らないが、あのそびえ立つ異様とも言える風情の山の、名前が出ていないのはおかしいではないか。1091mのエル・オフレという山があの三角の山だろうか。もう少し奥に1048mのトサルスという山があり、さらに奥に1348mのマサネジャというのがある。この山が見えていたのだろうか?あの谷の近くを抜けて山の向こう側に出る道が地図に載っており、この道を通るときに見える風景というものは一体どういうものなのだろうか、などと想像しながら、山の名前は未だはっきりせず、謎は深まりつつも、次の日電車に乗って再びソジェ−ルへ出掛けて行ったのだった。雲の多い日で、と言っても僕の滞在中のマヨルカは、朝曇っていても昼は晴れて夕方又曇りというパタ−ンが多く、だから昨日のあのドピ−カンの夕方のソジェ−ルというのは、かなり幸運な出来事であったわけであり、今から思えば、帰りのことなど気にせずあのまま反対側の山に登って、夕映えのソジェ−ルの街と、その街を囲む山々の風景を思う存分眺めるべきだったのかも知れない。登る途中で陽が沈んでしまったかどうかは、かなり際どいところではあるけれど−−。

電車が長いトンネルを抜けると、雨が落ち始めてきて、雲は完全に山を包み込んでおり、電車のゴトゴト走る音も何か湿った音で響いていた。駅を出ると街はすっかり雨で濡れており、雨合羽を着た観光客が、Barの軒下から軒下へ小走りに移動したりしているのが時折見えるくらいで、通りはひっそりと静かだった。皆Barに居座って、Beerを飲んだりタパス(酒のつまみ)をつまんだりしながら、雨が止むのを待っているのだ。僕も皆がやっている通りにするしかなかった。1時間待ってやっと雨が止んだ。しかし雲は依然として山に張り付いていて、時折雷鳴も轟いていた。僕はこの時、これから晴れてくるほうに賭け、反対側の山へ向かう道を急いだ。40分も歩かぬ内にあのバスから見えた風景が見れる場所に着いた。と言っても同じ風景ではなく、山の半分から上は見えないままであり、雨に濡れたソジェ−ルの街並のひっそりとした佇まいは、それはそれでまた違った魅力を見せてはいたのだけれども、やはりあの青と赤のコントラストを今一度という気分が強いままの自分だったし、明日は船に乗って移動するつもりなので、今日しかないのだ後生だから晴れてくれと念じながら、カメラバッグからスケッチブックを取り出してスケッチを始めたのだ。雲は流れは速いものの、山の姿を時折見せてはまた隠すという動作を続けるだけで、一向に消え去る気配を見せず、雷鳴も雨の降る合図なのか、打ち止めの合図なのかはっきりさせないまま、長い間隔を取って鳴り続けたのだった。結局2時間の間、一度パラパラと雨が落ちてきたけれど、雲はとうとう無くならず、山はほとんど描けずに、電車に乗ってパルマへ帰った。その夜、これで船に乗ってしまっていいのだろうかと、Bedの上でスケッチブックを眺めながら考え込んでしまった。そりゃまぁこのスケッチを完成させようとしたら、それこそ1日や2日では無理だけれど(あまり細かく描いてるからこれはスケッチとは言えないかも知れないが)少なくとも山の感じだけは描いといた方がイイのではないかと思った。日曜の船をパスすると月曜は船が無いので、火曜の船ということになって2日遅れることになるが、綿密なスケジュ−ルを組んでいるわけでは無いので、特に問題は無かった。そして日曜日、やはり曇っているのである。歩いて行ける所ならイイのだけど、電車で往復2時間660ptsするのだ。宿が安いから(800pts)長居出来るが、そうそう毎日電車で通って今日も駄目又明日と簡単には行けないのだ。昨日の天気がまだ続いていると見るべきだなと思い、カテドラルへ行き中に入ってみた。合唱団が賛美歌を歌っていて、大きな教会に快く響いていた。そしてステンドグラスからは陽が射し、エ?陽が射している?外に出てみると、雲は依然多かったけれど時折太陽が現われて、強い陽射しが街を走っていた。これは月曜日が勝負なのだ。そして月曜の朝がやってきて、晴れ時々曇りの天気のソジェ−ルの山の絵を描いたのだった。何と運のいいことに、街が祭りをやっているおかげで電車が一本増発され、帰りは8時の電車を捕まえればいいことになった。普通は6:20分が最終なのだから、かなり儲けた気分になるものだ。しかしそれでも、スケッチは完成しなかった。山は大体描けたが街が残ってしまった。またその晩、宿のBedの上で頭を抱えてしまった。スケッチはもうこれでいいだろうと思った。しかし問題はこの山の向こう側である。これを見ずして島を離れていいものだろうか?しかし地図に載っているあの道を走る路線バスは無いのだ。次の日山を迂回して、島の反対側のポレンサという所までバスで行った。途中左手に見える山々は、見る角度が違うからなのか、あるいはあの山々は見えていないのか、全然どれがどれか分からず、それでもやはり面白い風情の山々が連なっていて、港から見える半島もまた、新たな魅力をもって僕に迫ってくるものがあったのだ。バイクを借りようと思った。もうバイクしか無いのだ。次の日ソジェ−ルの港へ行ってレンタ屋さんをリサ−チし、さらに次の日、イヨイヨバイクを借りてあの山々へ向かったのだった。

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