第一話:不安のシンクロナイズ
第二話:人の心は複雑そうに見えて、至極単純明晰なもの
第三話:検閲システム
第四話:今あるのは、失敗の繰り返しがあるから…
第五話:温度差
第六話:偽物のコンサルタント
第七話:コロナ最前線
第八話:タイムスリップ
第九話:陰陽説
第十話:人文系大学の講義
第十一話:思考の美:玲瓏
第十二話:手作りのマスク
第一話:砂塵
第二話:見覚えのある光景
第三話:犬を家来にする猫、猫を家来にする犬
第四話:視線の彼方
第五話:トリセツ
第六話:マジック
第七話:再現性
第八話:駒
第九話:変化
第十話:ルールに合せるよりもルールに従わせる
第十一話:おもてなし
第十二話:私たち、言葉をとても大切にしています
第十三話:忘れるADHDと忘れることが出来ないASD
第十四話:冒頭
第十五話:本物の整理整頓
第十六話:揺れ
第十七話:意外な事実
第十八話:不安の次は不満
第十九話:嘘
第二十話:視覚
第二十一話:スマホのチャージ
第二十二話:一石二鳥
第二十三話:直線と曲線
第二十四話:雪
第二十五話:メインテナンス
第二十六話:継続と継承
第二十七話:遊び心
第二十八話:模倣
第二十九話:始まりは終わり
第一話:事実は小説よりも奇なり
第二話:運
第三話:あり得ないやりとり
第四話:蟹
第五話:リスタート
第六話:バレル嘘
第七話:機上
第八話:一枚の写真
第九話:錆(さび)
第十話:喪失の喪失
第十一話:ジョーカー
第十二話:私は素数…素数が素数でなくなるとき
第十三話:Three Wise Monkeys
第十四話:想い残し
第十五話:恩師
第一話:スカイハイ
第二話:シンクロナイジング
第三話:妬み
第四話:水を得た魚
第五話:夏の終わり
第六話:心の癒しYouTube:WATER(水滴)
第七話:Memorial Service
第八話:一足早いMerry Christmas
第九話:最後の一本
第九話:最後の一本
第十話:本物
第十一話:ジャイアント・キリング
第十二話:本音の嘘と建前の嘘
第十三話:フィクションとノンフィクションの倒錯
第十四話:射抜く
第十五話:九月
第十六話:捨て石
第十七話:中東の風
第十八話:モグラ叩き
第十九話:サイベリアン
【第二部 Naturally】
外来に<虚言癖>を訴えやってくる人がときに混じっている。
その多くが、家族同伴。
同伴と言うよりも家族が、彼らの嘘に困り果てて、何とかできないものかと思ってやってくる。
嘘と言っても、ピンからキリまであるように思う。
とてもわかりやすい嘘もあれば、なかなかわからないレベルの嘘もある。
私のクリニックにやって来られるクライアントの多くは前者である。
私の個人的な見解では、前者の嘘は、いわゆるアスペルガー症候群圏内の人たちの嘘であるように思う。
なぜなら、いわゆるアスペルガー症候群圏内の人たちは、本音と建前を使い分けるのがとても下手。
行間を読めない。
人の気持ちを察するのが苦手。
対人コミュニケーションはすこぶる苦手。
人が嫌い…人が怖いといういい方になることもある。
彼らが、人と話をするとき、本音がその中心であるから、嘘をつくのも下手。
すぐに<バレル嘘>をつく。
アスペルガー症候群圏内の人たちは、真正直すぎて、バレル嘘はびくびくしながらつく。周囲からしてみれば、これほどわかりやすい嘘はない。時々びくびくしないこともあるから注意は無論しておかないといけない。
それゆえ、彼らは決して詐欺師やペテン師になることはできない。
本物の詐欺師であれば、嘘がすぐにばれない。
どうしようもなくなって、身動きが取れなくなって初めて、自分たちが騙されているのに気づく。
トリックやマジックを自在に使えるのが、本物の詐欺師やペテン師…。
振込詐欺などの詐欺集団とすれば、アスペルガー症候群圏内の人たちは騙されるサイドの人間。
本物の詐欺軍団に属する人たちは留置場に拘留されることがあっても、アスペルガー症候群圏内の人たちは極めて少ない。もし後者の人たちが拘留されるときは、本物の詐欺軍団の手先にされて、違法なことであるにも関わらず、正しいことをしたと信じ、騙されたときが多い。
本物詐欺軍団のひとりが家族のなかにいれば、家族は、弁護士や警察に行くことはあっても、最初に私のところに相談に来ることはそう多くない。
アスペルガー症候群圏内の人たちは、自分たちの正当性や合理性を守るために、バレヤスイ嘘をつくが、その嘘がすでにばれていることに気付かずに、その嘘を守るための第二、第三の嘘をつく。
一般的に、男性社会よりも女性社会のほうが嘘の渦巻きをより激しく形成しているように感じる。
私の穿った見方かもしれないが、女性同士の会話で、見栄を張り、巧みな嘘をついている光景をみかけることがあるが、同じ女性であっても、女性のアスペルガー症候群圏内の人たちはその場からすぐにでも立ち去りたい衝動にかられているのではないかと同情したくなる。
<頭隠して尻隠さず>が男性の嘘であることが多い。
男性の嘘は美しくない。
その一方で、女性の嘘は、完璧なメークのように可愛くあってほしい…。
ほろ酔い気分で、嘘が真実のように思えるのも悪くない。
知能検査のひとつにWAISというものがある。
WAISでは言語性IQや言語機能の定量化を行うことが可能である。
アスペルガー症候群圏内の人たちにWAISを施行すると、かなり高い確率で、それらの値は非常に高い数値を示す。が、行間を読む力とか、人の気持ちを察する力とは限らない。言語に関する知識や理解の程度がすこぶるいいに過ぎない。
が、今の日本社会では、幼少期から受験戦争を勝ち抜くことを求められる傾向が強い。言語に関する知識や理解の程度がすこぶるいいとすれば、その戦いは楽になる。もしかすると無理をしなくても、いい成績が取れ、<頭がいい>と解釈されがちである。しかしながら、それはあくまでも表面上の言葉の理解や知識であり、その言語が真に意味するものではないことも往々にしてある。
わかりやすい嘘しかつけない特性も、アスペルガー症候群圏内の人たちの特性のひとつである、とひとりの精神科医として考えている。
人類は、言語という大変なものを創りだしたとしみじみ思う。
コミュニケーションを取る際には、どうしても言語がないよりもあったほうがいい。
しかし、その結果、いわゆるアスペルガー症候群と呼ばれる用語が生まれた。
長い人類の歴史の中で、最も大きな分岐点のひとつ…。
第一話:不安のシンクロナイズ
第二話:人の心は複雑そうに見えて、至極単純明晰なもの
第三話:検閲システム
第四話:今あるのは、失敗の繰り返しがあるから…
第五話:温度差
第六話:偽物のコンサルタント
第七話:コロナ最前線
第八話:タイムスリップ
第九話:陰陽説
第十話:人文系大学の講義
第十一話:思考の美:玲瓏
第十二話:手作りのマスク
第一話:砂塵
第二話:見覚えのある光景
第三話:犬を家来にする猫、猫を家来にする犬
第四話:視線の彼方
第五話:トリセツ
第六話:マジック
第七話:再現性
第八話:駒
第九話:変化
第十話:ルールに合せるよりもルールに従わせる
第十一話:おもてなし
第十二話:私たち、言葉をとても大切にしています
第十三話:忘れるADHDと忘れることが出来ないASD
第十四話:冒頭
第十五話:本物の整理整頓
第十六話:揺れ
第十七話:意外な事実
第十八話:不安の次は不満
第十九話:嘘
第二十話:視覚
第二十一話:スマホのチャージ
第二十二話:一石二鳥
第二十三話:直線と曲線
第二十四話:雪
第二十五話:メインテナンス
第二十六話:継続と継承
第二十七話:遊び心
第二十八話:模倣
第二十九話:始まりは終わり