南青山アンティーク通りクリニック

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【第二部 Naturally】

第三話:犬を家来にする猫、猫を家来にする犬

令和二年六月三日(水曜日)

性格という切り口

 現代はペットブームである。
そのトップを競っているのが犬と猫であり、ペットの双璧である。犬猫の人気度は、世界のペット業界を二分する。

 精神科医として、犬や猫のペットを一言で評するならば、犬は忠実、猫は自由奔放。
 性格的にみれば、全く相反する性格である。

忠実な犬とうつ病

 犬は人間に忠実であるがゆえに、犬に近い性格をもつ人であれば、うつ病になりやすい性格特性を持っている可能性がある。しかしながら、性格的要因に加え、心理的な要因、環境的な要因、遺伝的な要因が相互に複雑に関与しているので、うつ病になりやすい性格特性は、ひとつの要因に過ぎない。

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 今回のブログは、性格特性というひとつの切り口として書いている。
 犬や猫は、例えにしか過ぎない…。
 犬や猫を溺愛する人たちには、その点はご了解してほしい。話をわかりやすくするためである。

自由奔放な猫と発達の凹凸

 私の場合、猫という言葉から何をイメージするかと言えば、発達の凹凸を持つ人たちである。
 家族や恋人であっても、土足で上がってほしくないセフティエリアを持っていて、しかも鋳型に嵌められるのを極端に嫌う。
 好きなときに姿を見せ、フッと消えてしまう。大好きな人にはスリスリしてくるが、嫌いな人にはプイとそっぽを向く。一人で遊ぶのも好き。
 発達の凹凸を持つ人たちにもその傾向は強い。好きなものにはハマってしまうが、嫌いものには集中できない。

秩序性と規律性

 忠実な下部(しもべ)が欲しい人は、猫よりも犬を飼うことのほうが多いような気がする。しかも、マンションであるならば、足音で判断し、玄関まで出迎えてくれる。一人暮らしで淋しさを感じている人ならば、絶えずべったりのいわゆる忠犬ハチ公の犬のほうが癒しになる。しかし、一人暮らしの人たちは、散歩をしなくてもいい猫のほうがいいと言う。

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 几帳面で生真面目で会社や会社の上司に忠実に尽くす人は、かつての日本人に多かった。今は必ずしもそうとは限らないが…。
 犬の散歩は毎日大変であるが、義務のように散歩に連れていく。
 犬を飼う人たちのなかに、几帳面、生真面目で秩序や規律を重んじる人が多いように思う。精神科医の立場からすれば、かつての日本人やドイツ人に多いとされたうつ病親和性性格との類似性を感じさせられる。
 ところが、今回のコロナ問題で見方の変更を余儀なくされた。かなり多くの日本人は秩序や規律を大切にしたからである。
 となれば、すべての日本人が、典型的なうつ病親和性性格ではないが、その流れは脈々と受け継がれていると解釈もできる。確かに、若者のなかには欧米の個人主義を求め、その傾向は減弱しているかもしれないが…。

激しい渦

 会社の部下に忠実さを求める上司は多い。忠実な部下を抱えれば、上司は余計な不安を持たなくていい。
 が、昨今では、パワハラ、モラハラなどと言われかねない時代であるから、言いすぎないように、適度な距離を保ちながらのソフトなコンタクトが求められる。部下に忠誠を求める時代は終焉を迎えている。中間管理職の人たちには非常に面倒な時代に突入している。
 パワハラやモラハラを訴える人も確かに被害者かもしれないが、それらのクレームに対峙する中間管理職の人たちのストレスも計り知れない。
 価値観、物事の捉え方などの違いがあると言えば、確かにそうである。
 対人ストレスという激しい渦に巻き込まれそうになる。
 ちょっとしたボタンの掛け違いであったとしても、対人トラブルに発展する時代である。

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 日本由来の集団帰属性社会と欧米の個人主義社会の混合。
 人によっては、あるときは前者、あるときは後者。

猫を飼う人には発達の凹凸を持つ人が少なくない

 これに対して、
 猫を飼う人たちのなかに、自由奔放で勝手気ままな人たちが少なからず含まれているように思う。これは、いわゆる発達の凹凸の人に多い性格特性である。
 とてもラフな見方であるが、犬好きはうつ病、猫好きは発達の凹凸から来ているのではないかを、改めて考えさせられる。

 しかし、実際はそう単純なものではない。

 ただ単に、ティーカッププードルの可愛さ、猫のふわふわ感の触覚の心地よさに惹かれることもある。実家が犬を長年飼っていたために犬好きになることもある。猫好き人間のなかには、世話を焼くのがとても大好きな人たちもいれば、猫のように勝手気ままに生きる姿を自分と重ねている人もいる。

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 ひとつひとつあげれば切りがない。
 ここであらゆるパターンを列挙する紙面の余裕がないので、焦点を絞らざるを得ない。

中小企業の経営者や自由業

 中小企業の経営者のなかには、猫タイプが多い。
 自分に都合のいいルールを作り、部下にはそのルールに従わせる。あたかも、猫が大勢の忠実な部下の犬を抱えるようなものである。
 しかし、家庭では忠実に従う犬タイプの妻がいる場合と自分と同じ猫タイプの妻がいる場合がある。前者の妻は大変である。というのは、家庭でも職場と同様に、上司と部下の関係のように、わがままを言うことが多い。後者の妻の場合、自分の指示に従わない自由を謳歌する妻であるがゆえに、夫婦喧嘩が絶えない。合う時は最高のパートナーを得たといい気分になれるが、激しくぶつかり合うことも頻繁である。
 アーティスト関係の自由業も同様。
 簡潔に言えば、プロフェッショナルな仕事をする人たち。

忠実に上司に従う勤め人

 反対に、会社勤めの人のなかには犬タイプが多い。
 もちろん、猫タイプの人たちも大勢いる。
 会社勤めの人たちの多くは、決められたルールに従い、忠実に行動する。会社の上司に対して、的確に従うことが出来ない猫タイプの人は、会社で対人トラブルなどの不適応を起こしやすい。
 彼らは決められたルールを守るのはとても窮屈であり、それなら自分で起業したほうが楽であると考える。確かに才能があり、起業し成功すればいいが、そういう場合、ブレインとなるサポーター、あるいは総務的な仕事をする優秀な経営スタッフを持っていることが多い。
 ここに彼らの成功の秘訣がある。
 有名人で言えば、アップル社のスティーブ・ジョブズが該当する。
 私の知人にも数名いるが、個人情報の問題もあり、ここでは書けない。ときどき自分の力と錯覚を起こしているが、どうだろう?

 家庭では自分と同じように忠実な犬タイプの妻がいる場合とそうでない場合がある。前者の場合、忠実な犬タイプ同士のカップルであるから、子どもも同じようなタイプの子どもが育つ確率が高くなる。後者の場合、生真面目で几帳面な夫は、自由を求める妻に振り回されるか、尻にひかれるかである。

 

犬猫の混在

 私の場合、昔は犬的な生活を強いられ、精神的な苦痛を感じた。幸いなことに、今は猫的なスタイルでやっている。が、自宅では犬を飼っている(何十年も前に猫を数カ月飼ったという経験は少しある…)。自分は猫的なスタイルで生きようとしているに関わらず、ペットには犬の忠実性を求める。
 スタッフには、猫のような自由度を十分に与えるが、その一方では、当然のように、犬のような忠実性も求める。

 総じて、とてもわがままな生き方である。
 が、私とよく似た人は決して少なくない。

 ここが本話の最も重要な点である。

猫が犬を従わせる、犬が猫を従わせる

 猫が犬を従わせるのは、例えば、中小企業の経営者とその部下の関係のなかに見出すことができる。上司はわがままなワンマン社長でやりたい放題であるが、忠実で几帳面、生真面目な部下は、見えない苦労が絶えない。ワンマン社長は、さっき言ったことを忘れて、真逆のことを平気で言うかもしれない。
 とてもよくみられる光景である。

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 犬が猫を従わせるのも同様。
 昔も昨今も多い。
 几帳面で生真面目なタイプの人間が、猫のように勝手気ままな部下を統率するのは相当な苦労を要する。パワハラではないが、パワハラと騒がれる逆パワハラで、心を病むクライアントもいるからである。

 現代の会社の中での対人関係を、クライアントから頻繁に聞かされることが多いが、どちらの組み合わせもかなりストレスフル…。

 単純な比較は難しい。

 一応、会社が潰れずに経営が上手く行っていればいいという見方もあるが、どこかで歪が必ず生じているように思う。誰かが我慢している。

 以上が、私の夢の正体の一部である。
 どこかで見た風景ではなく、日頃から頻繁にクライアントから耳にしている風景である。

 残りはブランクで終わりたい…。
 もっと詳しく述べたいが、流れとして先に述べないといけない題材がたくさん残っているので、詳細はその後でもいいかなあ…と感じる次第である。

他の生き物

 ふくろう、ハリネズミ、爬虫類、恐竜などを始めとしたさまざまな生き物についても言及したいが、これもまたブランクにさせていただきたい。

 本ブログの読者には想像力を働かせてほしい…と思う。
 しかし、99%の確率で完全に読み切れないと思う。読まれるということは、私の現役引退を意味する。
 まだやり残したことが少しあるので、今すぐに引退するわけにはいかない…。

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 いいタイミングさえあれば、<犬猫を始めとする生き物に投影される人の心>として、一冊の書籍にまとめたいが、それだけのエネルギーがそのときに残っているかどうか甚だ疑問である。
 心の葛藤が続く…。

(第三話)特別編集動画

※今回のブログ(第三話)を特別編集(動画)しました。ナレーションはkoefont(AI:人工知能)です。
※音声ONですが、OFFにもできます。


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